かくのごとく、我思えり

京大生が、本の感想や勉強のことを書いていきます。

【京大法学部】苦闘する法学徒の日記⓷(2回前期第5週・第6週)

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はじめに

 

「苦闘する法学徒の日記」も3回目となりました。授業は回数を重ねるとともに難しさも増し、まさに苦闘しながら勉強しているところです。まあ、結構サボったりもしてますが…。

 

ともかく、今回はGW明けの5月6日から5月19日までの2週間を振り返ります。

 

前回の記事もお読みいただけるとうれしいです。

 

www.a-man-feels.com

 

 

民法第一部

 

この2週間で、心裡留保・虚偽表示・錯誤・詐欺・強迫を学びました。

 

私たちは契約を結ぶなどの法律行為を行うことができます。しかし、法律行為はいつもうまく行われるとは限りません。「契約を結んだが実はその内容を履行する気はなかった」、「ロレックスの時計を買ったが、実はそれが偽物だと判明した」などということもあるでしょう。そのようなケースに対応するため、民法には心裡留保などの規定が置かれており、場合によっては法律行為が無効になったり取り消されたりします

 

心裡留保・虚偽表示・錯誤・詐欺・強迫は、どのような状況に認められるのか(要件)や、それが認められるとどのような効果が発生するのかがそれぞれ異なっています。また、契約が無効になると、その契約をもとに新たな契約を結んだ人にまで被害がおよんでしまうので、心裡留保などには第三者を保護する規定が置かれています。が、この第三者保護規定にも違いがあります。

 

したがって、試験勉強では心裡留保などの要件・効果・第三者保護規定などを正確に把握したうえで、具体的な事例に当てはめられるようになる必要があります。…大変そうです。

 

余談ですが、皆さんは消費者契約法をご存知でしょうか。消費者と事業者との間には情報量などの面で大きな差があり、民法の規定だけでは消費者を十分に守れないことがあります。そこで消費者を保護するためにできたのが消費者契約法です

 

この消費者契約法ですが、昨年改正され、来月に改正消費者契約法が施行されることになっています。この改正はデート商法や霊感商法など新たな悪徳商法に対応するために行われたものです。民法の規定とも関連しているため民法第一部の授業で少し扱われたのですが、そのなかに面白い条文を見つけました。

 

「当該消費者が、社会生活上の経験が乏しいことから、当該消費者契約の締結について勧誘を行う者に対して恋愛感情その他の好意の感情を抱き、かつ、当該勧誘を行う者も当該消費者に対して同様の感情を抱いているものと誤信していることを知りながら、これに乗じ、当該消費者契約を締結しなければ当該勧誘を行う者との関係が破綻することになる旨を告げること。」(消費者契約法第4条第3号第4項・赤字筆者)

 

いわゆるデート商法に関する規定ですが、「社会生活上の経験が乏しいことから」という文言が気になりませんか?社会生活上の経験が乏しいことから恋愛感情を抱くって、要するに非モテってことでしょうか…?気になって調べてみたところ、やはり「社会生活上の経験が乏しいことから」という文言は法律家の間でも話題になったようです。新たな消費者契約法は来月施行されますが、いったいどうなるんですかね…?

 

 

刑法第一部

 

構成要件要素、因果関係、不作為犯などについて学びました。

 

「日本の法律は加害者に甘い!」と言われることがよくありますよね。ただ、因果関係についての授業を受けるうちに、少なくとも因果関係の認定に関しては加害者にかなり厳しいと感じました

 

まず、刑法を考えるうえでなぜ因果関係が問題になるかを説明します。AさんがBさんの腹部を包丁で刺してBさんが死亡した場合、Aさんの包丁で刺した行為によってBさんが死亡したのは明らかですよね。

 

ですが、例えばDさんのことを憎んでいたCさんが、「途中で飛行機事故に遭って死んでしまえばいいのに」と思ってDさんにハワイ旅行を勧め、Dさんが飛行機でハワイまで行こうとしたところ、Dさんが本当に死んでしまったという場合はどうでしょう?このケースで「Cは人殺しだ!」と言う人はいないと思います。Dさんが飛行機事故に遭ったのは偶然であって、Cさんにどうこうできる問題ではないですからね。

 

以上の例は極端ですが、因果関係をどこまで認め、どこから否定するかは刑法を考えるうえで重要な問題です。そして、判例は因果関係を比較的広範に認めています

 

例えば、ある人を車のトランクの中に監禁し車を道路上に停めていたところ、別の車が衝突してきて監禁の被害者が死んでしまったという事例で、最高裁は監禁行為と死亡との間の因果関係を肯定しています。*1「監禁は立派な犯罪なんだし、因果関係が認められるのも仕方ないんじゃない?」と思われる人は、次のケースと比較してみてください。

 

Case:AさんがBさんを殴ってけがを負ったため、Bさんが救急車で病院まで搬送されたところ、その道中で事故に遭いBさんは死んでしまった。

 

このケースで因果関係が認められると考える人はあまりいないのではないかと思います。殴った時点で、「救急車搬送中に事故に遭って死んでしまえ」と思っている人はいませんからね。

 

でも、この救急車の事例と先ほどの監禁の事例はほぼ同じではないですか。監禁した時点では死なせることまでは考えていなかったにも関わらず、監禁致死罪まで認められるのはいささか不当だと思います。

 

他にも因果関係に関する興味深い判例はいくつかあるので、興味のある方はぜひ調べてみてください。

 

それで、この因果関係ですが、理論としてもかなり難しいように感じました。どのような場合に因果関係を肯定するかについてはいくつか説があるのですが、それぞれ抽象的で理解が難しいです。判例も一つの明確な基準を示しているわけではないので、それぞれの判例を把握するのも一苦労です。

 

教科書を読むだけではちんぷんかんぷんで、基本書を2・3冊読み比べてやっと「何となく理解できた気がするなあ」というレベルに達しました。刑法の授業を担当している先生が山口厚先生の弟子を称しているだけあって、山口厚先生の『刑法総論』(有斐閣)が授業を理解するのに最も役立ちました。

 

 

憲法第一部

 

国民主権・代表制・政党・天皇制を学びました。

 

国民主権と代表制の理解に苦しみました。国民主権の「国民」とは何なのか、「主権」とは何なのかといった抽象的な議論なだけに、頭が混乱しました。「憲法制定権力って何だよ!目に見える形で俺の前に持ってこい!」とわめきたくなります。

 

仕方がないので、教科書を何回か読んだうえで、基本書を数冊読み比べて論点をノートにまとめるという地道な作業を行っています。ノートにまとめるという勉強法には批判も多く、僕も時間がかかりすぎるといったデメリットがあるのであまり好きではありません。ですが、理解できない以上どうしようもないので、時間をかけてノートまとめをしています。

 

基本書を見ていて驚いたのですが、いわゆる「芦部憲法」って、記述がかなり淡泊なんですね。主権論についてもあっさりと書かれていただけだったのでびっくりしました。

 

個人的には、辻村みよ子先生の『憲法』(日本評論社)と佐藤幸治先生の『日本国憲法論』(成文堂)が理解の助けになりました

 

 

日本法制史

 

土地法・家族法・契約法の各観点から前近代全体を振り返る講義でした。

 

日本法制史の授業は次回からようやく近代に入ります。前近代の授業は一回の授業で数百年進むことがざらにあったため、予習復習が大変でした。近代以降は学習の負担が少し減るのではないかと期待しています

 

 

最後に

 

民法・刑法・憲法のいずれも勉強が大変になっていると感じます。抽象的な理論をインプットする際にも、試験で具体的な事例にどう当てはめるかを意識して勉強したいものです

 

最後までお読みいただきありがとうございました。次回は6月3日(月)に投稿する予定です。

*1:最決平成18年3月27日刑集60巻3号382頁